日本のコゴメグサの系統に関する一考察
ー 日本のコゴメグサの由来について -
https://euphrasia.sanya-net.ddo.jp

系統樹作成ソフトについて

本研究では、系統樹作成にベイズ統計学に基づくMrBayesを使用しました。
私が作成した「MrBayesの使い方(pdf版)」はここに、あります。ご参照下さい。

【2020年3月3日】
ヨーロッパのコゴメグサを紹介します!  
   2016年から2018年にかけて、ヨーロッパのチロル・ドロミテ地方、スイス、ピレネー地方そしてノルウェーを旅行し、様々なコゴメグサと出会いました。この経験から、やはりコゴメグサの本場はヨーロッパだなと感じています。不十分とは思いますが、何とかそれらの分類をしてみました。上記メニューの最後の項目に追加しておきましたので、ご覧いただければ幸いです。
 ヨーロッパの山地では、当たり前のように様々なコゴメグサが咲き誇っていました。同じ場所に、異なった種類のものが混生したりしているところもありました。
   ヨーロッパの自然の中でのコゴメグサと出会い、本当に幸せな時を過ごすことができました。
 標本分類は不確かなもので、とりあえずこんなものかなという程度です。正確な分類は、とても私の力の及ぶところではありません。

はじめに


 平成27年3月末で、静岡県立高校の教員を定年退職し、平成28年3月末までの1年間、静岡大学理学部生物学科の徳岡研究室の研究生として、日本のコゴメグサに関する分子系統学的研究を行いました。その時に得られた結果を報告したいと思い、当サイトを立ち上げました。ここで報告している内容については、科学的な根拠が不十分なままで、研究者の立場からは、かなり飛躍している、と思われる方も当然おられると思いますが、その点は、大目に見ていただきたいと思います。
 また、お忙しい中にもかかわらず、研究生として受け入れてくださった徳岡先生をはじめ、実験手順や操作の手ほどきをしてくれた研究室の方々に、この場をお借りして感謝申しあげます。

​ コゴメグサについて
​ コゴメグサはハマウツボ科コゴメグサ属に属します。半寄生で、亜熱帯や熱帯地方の高山に生育する一部を除いて、一年草の草本です。冷温帯性で、地域ごとの変種が多いのですが、日本には大きく3種が分布します。多くは高山帯の草地に生育しています。ミヤマコゴメグサ(Euphrasia insignis)は、主として北アルプスなどの日本海側の多雪地帯の高山に分布し、ヒメコゴメグサ(Euphrasia matsumurae)は南アルプスやその近辺の高山帯に分布しています。また、タチコゴメグサ(Euphrasia maximowiczii)は前2者よりは標高が低い高原の草地に分布しています(写真1参照)。
 寒冷地に生育する植物の大半は根や茎などが生育に適さない冬季などの低温期にも枯れないで残っている多年草です。これは、植物体が成長できる気温が保たれる期間が1年を通じてごく限られている寒冷地に適応した形質と考えられます。しかしコゴメグサが一年草であるということは、根や茎などの植物本体は寒冷期にはすべて枯れてしまい、種子の状態で低温の時期を過ごし、気温がある程度上昇して成長可能になるごく限られた、北半球では7月〜9月初旬という短い期間に、発芽からはじめて成長・開花・結実という仕事をやってのけるという植物なのです。半寄生という生活様式も、このような条件に適応した生活様式かもしれませんが、この点でも興味深い植物であると思っています。
 ミヤマコゴメグサには多くの亜種や変種がありますが、今回実験に用いたものは、八方尾根で採取したものだけです。拙作の「山野の植物と山岳地形」というWebページにも3種の写真を掲載してあります。リンクを張っておきましたのでご参照下さい。
リンク:ミヤマコゴメグサヒメコゴメグサタチコゴメグサ

 また、コゴメグサはヨーロッパの山地帯ではごく普通に見られるのですが、オーストリアのチロル地方やイタリアのドロミテ地方、スイス、そしてピレネー山脈をはさんで南フランスや北スペインなどで観察したコゴメグサについて紹介もしています。
 
写真1 今回採取し、実験に用いたコゴメグサ
ミヤマコゴメグサ
(長野県八方尾根)
ヒメコゴメグサ
(山梨県金峰山)
タチコゴメグサ
(長野県蓼科高原)

 2000年の12月に、ニュージーランドでルートバーン・トラックやMt.Cook村周辺のトレッキングに行ったとき、現地ではニュージーランド・アイブライトと呼ばれていますが、Euphrasia属の植物を見つけました。また、現地で購入した植物図鑑にもEuphrasia属の数種が掲載されていたのですが、それらが、日本の山で目にしていたものと、とてもよく似ていることから、どうして同じようなものが、遠く赤道で隔てられた日本とニュージーランドに分布しているか、疑問に思いました。そこで、植物系統学を専攻されている神戸大学の先生に伺ってみたところ、明確な理由付けはなされていないこと、仮説としてゴンドワナ大陸などのかつて陸続きだったところが大陸移動によって分離していったことなどで現在の分布状況を説明しようとする考え方、などを教えていただきました。
 その時は、さらなる研究をしてこの謎を解明しようなどとは、高校の一理科教諭に過ぎない自分には考えも及ばなかったのですが、それから15年過ぎた2014年9月という、定年退職が近くなった頃、さきの神戸大学の先生から、コゴメグサの世界的な分布や系統に関する2008年に出た論文(参考文献1)を送っていただいたのです。 しかしその時の私は、分子系統学的な知識を全く持ち合わせていなかったので、論文の内容を全く理解することができませんでした。。大学を出てから35年間高校の教員をしてきましたが、その間に大きく発達した分子系統学的な研究方法については、高校の教科書で見る程度だったのですから。
 私は、なんとかして、送って頂いた論文の内容を理解できるようになりたいと思いました。また、当時は試行錯誤しながらですが、NCBIに登録されている日本のコゴメグサの遺伝子情報を捜してみると、ミヤマコゴメグサのITSとタチコゴメグサのTrnL-TrnFくらいしか無かったことから、日本にはコゴメグサをテーマにしている研究者がいないのでないかと考え、それならば自分が日本のコゴメグサの遺伝子データをとり、上記参考文献1に掲載されているコゴメグサのデータとあわせて系統樹を作成し、日本のコゴメグサが世界の様々な地域のコゴメグサとの間で、どのような系統関係に位置するのか調べてみたら面白いのではないか、と思ったのです。
 そこで、自分の母校でもある静岡大学の徳岡先生(准教授)の研究室に伺いました。
 

※ほかにも植物のに関する以下のサイトを公開しています。
 野草やアクリル画など興味があったら、ぜひ、一度ご覧いただければうれしいです。
 
サイト名 概  要
山野の植物と山岳地形 日本の低地から高山帯までの311種の植物と山岳地形を紹介しています。写真はすべて自分で撮影したもの。高校の自然学習や生物教材としても活用。
山野草つれづれ日記 上記サイトに掲載できなかったものをブログ風にして紹介しています。ヨーロッパで撮影した野草も紹介しています。
趣味でアクリル画を描いています
---  光あふれる世界 ----
定年退職をしてから、アクリル画を描きはじめました。まったくの自己流で、ゆっくりのペースで少しずつしか描けませんが、頭に浮かんだイメージを具現化する作業は楽しいです。
Linuxの活用をめざして 高校教員としての現役時代に、職場のネットワーク環境下でのLinuxの活用法について研究したり、Webカメラと組み合わせて教材を作成したりしました。内容はもう古くなってしまいましたが、OSとしてのLinuxをもっと普及させたいとの思いは今も変わらず、かつての挑戦を紹介しています。