日本のコゴメグサの系統に関する一考察
ー 日本のコゴメグサの由来について -
https://euphrasia.sanya-net.ddo.jp

系統樹作成ソフトについて

本研究では、系統樹作成にベイズ統計学に基づくMrBayesを使用しました。
私が作成した「MrBayesの使い方(pdf版)」はここに、あります。ご参照下さい。

【2020年3月3日】
ヨーロッパのコゴメグサを紹介します!  
   2016年から2018年にかけて、ヨーロッパのチロル・ドロミテ地方、スイス、ピレネー地方そしてノルウェーを旅行し、様々なコゴメグサと出会いました。この経験から、やはりコゴメグサの本場はヨーロッパだなと感じています。不十分とは思いますが、何とかそれらの分類をしてみました。上記メニューの最後の項目に追加しておきましたので、ご覧いただければ幸いです。
 ヨーロッパの山地では、当たり前のように様々なコゴメグサが咲き誇っていました。同じ場所に、異なった種類のものが混生したりしているところもありました。
   ヨーロッパの自然の中でのコゴメグサと出会い、本当に幸せな時を過ごすことができました。
 標本分類は不確かなもので、とりあえずこんなものかなという程度です。正確な分類は、とても私の力の及ぶところではありません。

材料及び方法

(1) コゴメグサの採取について
 日本のコゴメグサについては、以下の3種を採集した。
 ミヤマコゴメグサ Euphrasia insignis susp. insignis var. insignis
     採集日時及び場所 : 2015年7月28日 15:30 八方尾根
                  (東経138度47分 北緯36度41分 標高1900~2000m)
 タチコゴメグサ Euphrasia maximowiczii
        採集日時及び場所 : 2015年7月28日 10:00 白樺高原 八ケ峰公園
                  (東経138度14分 北緯36度5分 標高1600m)
 ヒメコゴメグサ Euphrasia matsumurae
    採集日時及び場所 : 2015年7月27日 10:00 金峰山山頂
                  (東経138度37分 北緯35度52分 標高2599m)

 ニュージーランドのコゴメグサについては、2種を採集したが、種名については確定できていない(写真2参照  写真下の学名はとりあえず候補として考えているもの)。
    採集日時及び場所 : 2016年1月29日 11:30 マッキノン峠の手前の森林限界を超えた草地
                  (東経167度8分 南緯44度8分)
 
写真2 ニュージーランドで採集したEuphrasia
Euphrasia revoluta(!?) Euphrasia zelandica(!?)

(2) DNA抽出、PCRによる遺伝子増幅、及びシークエンサーによる塩基配列の決定
 (実験について詳細を知りたい方は、PDFを参照して下さい。)
 DNAの抽出はCTAB法による。CTAB法については参考文献3を参照。PCRに用いたプライマーは以下の通りです。すべて、いわゆるユニバーサルプライマーで特別なものは必要ありませんでした。
<遺伝子> <プライマーの名称>  < 塩 基 配 列 >
  ITS              ITS4                        5'-ATTGATATGCTTAAACTCAGCG-3'
                      ITS5                         5'-AACCTGCGGAAGGATCATTGTC-3'
   TrnL-TrnF    TrnL-cF                     5'-CGAAATCGGTAGACGCTACG-3'
                      TrnF-fR                     5'-GGGGATAGAGGGACTTGAAC-3'
   atpB-rbcL     atpb-F                    5'-AAAGGCTACATCTAGTACCGGACC-3'
                      rbcL-R                      5'-GCTTTAGTCTCTGTTTGTGGTGACAT-3'
   rps2             rps2-47F                  5'-CTCGTTTTTTATCTGAAGCCTG-3'
                      rps2-66R                  5'-ACCCTCACAAATAGCGAATACCAA-3'
   matK            matK-472F               5'-CCCRTYCATCTGGAAATGAGAAAGATTTCTGC-3'
                      matK-1248R              5'-GCTRTRATAATGAGAAAGATTTCTGC-3'
        
 PCRは94℃1分、55℃1分、72℃1分のサイクルを35回繰り返しました。
 PCR後はCIAP処理を行い、シーケンス処理までの間は4℃または凍結保存しておきました。
  オートサイクルシーケンスによる塩基配列の決定は、フォルムアミドによるヒートショックの後、Applied Biosystems 3130/3130xl Genetic Analyzerによって実行しました。

(3) 系統解析
 得られた遺伝子の塩基配列データををもとに、先の参考文献1や2に掲載されているEuphrasia各種についてはNCBIの遺伝子データバンクからダウンロードして系統樹を作成しました。matKの塩基配列情報については、直接NCBIのデータバンクで検索を行い、主としてEuphrasia節に属するもののデータしかありませんでしたが、ダウンロードして新たに得られた日本及びニュージーランドの種のデータと合わせて、系統樹を作成しました。
 系統樹は主としてMrbayesというBayes統計学に基づいて系統樹を作成するソフトを用いました。MrBayesを用いたのは、参考文献1でもつかわれていたので、結果を比較するのには、同じソフトを用いた方が良いであろうと思われたこと、また、UbuntuというLinuxをOSとしているPCであれば、BEAGLEライブラリや複数コアを持つCPUを効率的につかえるmpiパッケージを導入しながらソースコードからコンパイルして用いることで処理速度を相当に上げられたこと、などです。
 MrBayes及びMrBayesによる解析を行う上で必要な他のソフトを含めた使用法については、別に
 MrBayesの使用法(PDF)を作成してありますので、ご参照下さい。
 なお、本サイトで提示されるBayes法による系統樹は、すべて50%多数決合意樹(50%-majority rule consensus tree)
です。